0.人物と用語
《老猫》:
『四畳半の小屋の魔王』。
頭から獣の耳を生やした獣人とおぼしき女。
「ただの老猫に過ぎない」と己を名乗るその通り、決して若い年の頃とは見えない。
生まれながらの白髪は年を経て細く薄く地肌の色を透かし、同色の三角耳は自重を支えきれず常にいくらか垂れ下がる。
その身に抱えた魔力は衰えつつも未だ魔術師と名乗るに十分で、垂れかけた瞼に半ば隠れた氷色の瞳は鋭い光を保ち続けている。
高い塔、豪奢な建物、そうしたものを嫌い、たった四畳半ばかりの小さな小屋に住まう。
彼女の『魔王城』には巨大な天窓がしつらえられ、建物そのものが彼女の魔力により方々へと転移する。
『煮える鍋の』アルフ:
この城の魔王に仕えるウィザード。
燃え立つような赤毛に菫の瞳、人間とは見えぬ薄紫の血色をした肌を持つ。
少年から青年へ差し掛かる年の頃。その仕草は演劇じみて大仰、口ぶりは迂遠かつ意味深。彼なりの美学に基づくその言動は理解者が少ない。
その二つ名は腹の中の怒りをすぐに吹きこぼすその心性から取られた。
できそこないの世界:
定期更新ゲーム『四畳半魔王城』の舞台。
魔王、勇者、護衛、ダンジョン、そうした単語に付随するあらゆる概念を『黄金の楔』の契約で縛ることで平和を保っている。
かつては生まれ、15週で滅ぶことを繰り返していたが、それも過去のものとなりつつあった。
黄金の楔:
できそこないの世界を縛る世界律。
モンスター退治、ダンジョンの宝箱からのアイテムの入手、魔王の討伐など、
かつて流血や犯罪を伴ったあらゆる行為を、金銭の授受による商売とする。
滅びの予言:
このたびできそこないの世界へ下された、15週の後の滅びの予言。
長らく縁のなかったはずの滅びに世界は恐慌し、
それまで店を構え堅実に生きてきた魔王たちの多くは勇者となって滅びの日までの享楽を求めた。
滅びを乗り越えるためには、魔王の商売により滅びをもたらすものを丁重にもてなす必要があるという。
魔王:
できそこないの世界においては、おおむね『商店主』を意味する。
城という店舗を構え、来訪者を待ち、訪れた勇者へ商品を販売し、さまざまなサービスを提供する。
先の予言により、今なお魔王を続けようとするものは「滅びを避けようとするもの」とみられることが多い。
勇者:
できそこないの世界においては、おおむね『顧客』を意味する。
魔王の城へ赴き、販売されている商品を購入し、そのサービスを享受する。
護衛:
できそこないの世界においては、おおむね『店員』を意味する。
商売のための問屋『マーケット』を通しての期間契約によって魔王に雇用され、ともに商売を行う。
スライム・ハーピィ・ウィザードなど、その分類にはかつて魔王の配下であった魔物たちの影響が強く残る。
徳/カルマ:
主に遵法性を示す際、できそこないの世界で用いられる基準。
魔王や勇者、護衛の人物像を示すだけでなく、商品や建造物にも存在する。
禁忌指定委員会:
魔王や護衛とは別の力を行使する「カガクシャ」たちの組織。
存在を『禁忌』に指定し、封印する権限を持つ。
彼らの予測によれば魔王のうちのひとりが世界を滅ぼすとされ、そのひとりを『禁忌』とし封印することで滅びを避けようとしている。
だが決して一枚岩ではなく、その内部では所属者の様々な思惑が交錯している。